パリで活躍する素敵な方々にインタビューし、それぞれの「モンパリ」をお聞きします。



セ・サンパ
感じいい!親切!ちょっと贅沢!「セ・サンパ」とパリジャンは表現します。そんなサンパなパリを、ほぼ毎週更新でご紹介しています。
番外編「ワイン評論家 “ジャン・マルク・カラン“に聞く」
2005.04
 ■ Interview つづき
「チリとかカリフォルニア、またはオーストラリアといった外国産のワインが入ってきていますがどう思われますか?去年の目隠しテストでオーストラリアのワインが世界一に選ばれましたが」

  世界中でワインが改良されることは消費者にとってありがたいことです。またそれを作る側の人間にとっても刺激にこそなれ悪くは無い筈ですね。もっといいものを作ろうとすることになるわけで。いいものが出来るとある基準ができてきます。近い将来どんどんいいものができるでしょうから、より精錬された、味覚的にも風味にも突出したそしてユニークなものが生み出されるでしょう。はっきり言えば、オーストラリアのワインを飲みたい人にとっては、オーストラリアワイン独特の風味をもったワインがいいことになるわけで、ボルドーにもコートデュローヌにも似ないのが望ましいのです。そうでなければいろいろな土地柄で作る理由がわからなくなります。


「ここ数年ボルドーでは稀なほどいい年があったにも拘らず、はけが悪いようですが価格低下という消費者にとって嬉しいことは起こるのでしょうか。また外国産の安いワインに対抗する戦略といったものがあるでしょうか」

 2002年のメドックは大体2001年よりいいのですが値段は安くなっています。ですからこの例では安いから質が低下しているということにはならないわけですね。需要に対して供給がだぶついているのです。ですからそういうことがわかれば的確な情報のもとにという条件でいい物を安く買えるわけです。そういう的確な情報を提供するのがまさに私の役割なのです。
安くていい外国産のものがあれば評論家として国産のものと同じように関心を持ちます。繰り返すようですが、私の役割は消費者の方に良いワインの情報を提供することにあり、製造業の人達の為に販売やマーケティングの戦略を提供するためにやっているわけではないのです。


「ワインのシャトーのオーナーが変わるのをよく見聞きするのですが、これはワインの質に影響するのでしょうか。」

 オーナーが変わることは機材の変化、販売のポリシーの変化につながるということです。グランクリュのシャトーが高く売られた場合、新しいオーナーはそのシャトーに投資して、より高品質のワインを生み出そうとします。またワイン造りに対する理念の変化,視点の変化にもつながりますから別のスタイル、別の味を生み出すことにもなりますね。例えばタンニンを多く引き出すか否かによってボワ(樹木)の感じが強まったり弱くなったりします。ですから私の会員(カルネ定期購読者)にはそういったオーナーチェンジも全て伝えていますので、そういう細かな変化にもよくついてきていますよ。


「高級なレストランで食事するとき、目が飛び出るような高いワインがありますが値段に比べてあまりおいしくないときがしばしばあります。味が値段に匹敵しないというか、何かそういうことを避ける秘訣はありますか」

 よく知られた高級ワインと高い値段は必ずしもワインの質を保証することにはならないのです。どの領域でもそうですが適格な情報を得ることです。


「2003年のプリムールで15ユーロ以内でお勧めのワインを一つ挙げてください」

 二つ挙げましょう。私のプリムールの評価では、今までに無い高得点をあげたものです。

  まず、シャトー・トゥール・オーカッサン Chateau Tour Haut Cassan2003、メドック・クリュブルジョワです。私は、15.75点(20点満点)をつけました。大変美味しいです。
直接シャトーで購入可。税込み13ユーロ。Tel :33(0)5 56090077、Fax:33(0)556090624.  

次に、シャトークロゼChateau Clauzet2003、サンテステフ、クリュブルジョワです。これはフルーティ、豊満で魅力的です。後味はこのワインでは今まで味わえなかった素晴らしく長いニュアンスに富んだものとなっています。美味しいですよ。15.75から16点です。
シャトーで直接購入するかワイン取扱店にて、税込み15ユーロ。
Tel:33(0)556593416  Fax:33(0)556593711


「ご自分の宣伝をなさるとしたら?」

 現在2004年のプリムールを試飲していますが(4月20日現在)皆様にそれを私のホームページでライブで見ていただけます。2004年のボルドーを発見できます。フランス語バージョンと英語バージョンがあります。
去年は20日間にわたり毎日リポートしました。読者は私と同時にワインを発見し毎日やるテレビ番組のように私の評価をフォローすることができたわけです。
http:// www.quarin.com

「どうも有り難うございました。最後に日本の読者にメッセージをお願いします。」

 サントリーグループが84年に買い取ったシャトーラグランジュの人々の研鑽は評価できます。質の落ちていたあのクリュ(*)を見事によみがえらせました。短期間でちょっと美味しくしようと思えばそれも可能だったのですが、彼らは基本を良くすることに拘ったのです。土台を良くするというのは時間を必要とします。そのクリュがクリュ独特の味わいを出していくのを待つわけです。その意味でカベルネソーヴィニョンの選択は正しかったんです。メルロはすぐにまろやかになっておいしい感じがするんですが、壜に入れてからの熟成では長く持たないんです。その意味で、「メドックのグランクリュとはこうあらねばならぬ」、というヴィジョンをもたれた日本人の深い考えに敬意を表します。

*あるぶどう園で造られたワインの事を指すが、ワインの等級のこともいう。1855年の万博のときメドック地区のみのワインが1-5級まで格付けされた。例外はソーテルヌ地区のシャトーディケムとグラーヴ地区のシャトーオーブリオン、現在ではサンテミリオン地区も独自の格付けをしている。

 カランさんの説明は大変明快で彼のワイン講義も数学的といえるほどクリアーです。例えば、悪いワインの一例として、タンニンが強すぎるものがありますがこれは渋いと唾液の分泌がストップしてしまい、スムーズに飲めなくなるからだそうです。
彼の明快、合理的な説明によってワインの評論もわかりやすい、より客観的なものになっていくでしょう。彼はフランス人には珍しく英語も達者です。

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