パリで活躍する素敵な方々にインタビューし、それぞれの「モンパリ」をお聞きします。



セ・サンパ
感じいい!親切!ちょっと贅沢!「セ・サンパ」とパリジャンは表現します。そんなサンパなパリを、ほぼ毎週更新でご紹介しています。
番外編「ワイン評論家
“ジャン・マルク・カラン“に聞く」
 
2005.05

今、日本でもワインブームによりソムリエを目指す人が増えています。ワインの消費量も益々増加傾向にあり、日本人の食生活にもすっかり定着しました。そこで今回は《パリに生きる番外編》としてボルドー在住のワイン評論家、ジャン・マルク・カラン氏にインタビューしました。
氏は『Carnet de degustation 』(試飲ノート)を定期的に刊行し、国内、国外を問わず試飲会やワインの講義を開いて好評を博しています。
ジャン・マルク・カラン
1955年、シャトーヌッフデュパップのワイン醸造の家系に生まれる。ボルドー大卒。‘84-’85ワイン研究所(L’Institut d’Oenologie)にてワイン学の研修,ドメーヌドゥシュヴァリエでも研修。‘89ワイン学教授資格取得。
『ボルドー・カンテッサンス』、『カルネ・ドゥ・デギュスタション』(点数評価の試飲ノート)を刊行、各地で講座を持つ。
またシャトーでの講義もユニーク。

 ■ Interview
「ワイン評論家というのは例えばワイン学者(ワイン利き)と比べてどういう職業なのでしょうか?」

 ワイン評論家はワインを消費する人の味方で、ワイン利きはシャトーやワイン製造業者の利害の為に働きます。


「あなたはフランスのロバート・パーカーに当たるわけですね。全くシャトーとかに関係なくどこかの企業の為に働くということもないわけですね。」

 そうです。私の収入はワイン評論のみで出版しているものにも広告の類は一切載せていないんです。そうでないと偏りの無い批評はできません。


「メドックに住んでおられますがお仕事の場に住んでいるのはやはり好都合ですか?ボルドーを専門とされているわけですか?」

 メドックに住んでいることで、私の批評するワイン畑の発芽から収穫までを目で見ることができますからより完全によりプロとしてのヴィジョンが得られます。
ボルドーの専門家になった訳は、やはりボルドー地方になんと言っても素晴らしいワインが集まっていると考えるからです。ボルドーワインが好きで、なぜこんなに美味しいのか知りたいと思ったのです。


「試飲をするのもしんどいですけれどもまたその舌の感覚を客観的に読者に伝えるのも大変ですね。それぞれの好みというのもありますし」

 一般に好みは問わないといいますが、個人的には自分の好みは後回しにしてそれぞれのワインの資質を客観的に捕らえるようにしています。よく、あるワインを好きだとそれはいいワインだという風に考えがちです。ところがよく出来たワインでなくても美味しく感じられることもあるんですね。例えば車を買うとき高級車と普通のものとを混同しませんよね。それと同じです。客観的でいられますね。そして同じレベルの車種なりワインの等級から好きなものを選ぶのが主観というわけです。


「出来たばかりのプリムール(*)の批評をされていますが若いワインを試飲するのは難しくありませんか?見通しを間違うということはないのでしょうか。」
*プリムールとは、収穫後半年ほどを経た樽の中のワインのこと


  まず第一に難しいことは短期間で大変な数のワインを利かなければならないことです。第二は試飲しているワインを正しく評価するということです。それ以下でもそれ以上でもいけません。ワインの熟成に伴い試飲も続けて、後から試飲したものがそれより点が上がったか下がったかを知らせます。


「良いワインと最上級ワインの基準はなにでしょうか。土壌と必然的に関係があるのでしょうか?」

 最高のワインは良いワインより感動を呼び起こします。ワインの魂の深さというかそれはやはり土壌と関係してきますね。ただそういうものは人間の解釈ですから、最終的なワインの味は醸造にたずさわっているワインの味や質を解釈する人間に拠っています。ですからその意味ではワインは文化的産物と言えます。

「前の質問に関連するのですが、ムートンロシルドがカリフォルニアのロバート・モンダヴィと技術提携して同じカベルネ・ソーヴィニョンからOpus one(オパスワン)を作っていますが同じようにできあがるということはありますか?」

 いいえ、違ってきます。時にはムートンより優れ、時には悪くなります。ヴィンテージによりますね。カリフォルニアのワインのスタイルはボルドーと違います。品種に関しては常にその葡萄が生まれたところが最高のものを生み出します。ですからメドックでカベルネ・ソーヴィニョンが素晴らしかったときは他の追随を許しません。そういう品種毎の特質や詳細をお話しするのが私の主催する講座です。是非来てください。
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【back number】 vol.1 パリは私を放っておいてくれる街 平沢淑子さん
  vol.2 パリのエネルギー源は人間関係 芳野まいさん
  vol.3 エール・フランスパイロット 松下涼太さんに訊く
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