パリで活躍する素敵な方々にインタビューし、それぞれの「モンパリ」をお聞きします。



セ・サンパ
感じいい!親切!ちょっと贅沢!「セ・サンパ」とパリジャンは表現します。そんなサンパなパリを、ほぼ毎週更新でご紹介しています。
デザイナー Reiko Kozaki Méry 
  2010.03
 ■ Interview プロフィールとインタビューその1 |その2
11、 生活する場所は、作風に影響しますか? パリでの制作活動には「パリっぽい」特徴が現われるのでしょうか?

パリ、自宅のアトリエ空間

3~4歳の頃、自分はフランス人だと母に言ったそうです。だから、もしかしたら作風は生まれたときから「パリっぽい」のかもしれません。

「パリっぽい」という解釈ですが、これは皆さんとちょっと異なるかもしれません。
私はどこにいても下町が好きです。「パリっぽい」といえば肉屋の親父がぶつぶつ言ってるような雰囲気なんです。私の生まれた新川町は、まさにその「パリっぽい」雰囲気でした。小さな店が並び、八百屋さんが毎朝店の前を掃除して。私は、タバコ屋を営んでいた祖母の膝の上で、行きかう人に「こんにちは~」と言っていたそうです。
新川町の「パリっぽい」雰囲気はもう無くなってしまいました。大型スーパーに押されて、小さい商店は全部つぶれたんです。「パリっぽい」ものって私の故郷のことなんです。どこに住んでもこの「パリっぽい」もの=故郷っぽい何かを作ってるのかもしれまん。

12、パリに移住する前にも頻繁にパリを訪れていたReikoさん。パリの昔と今、変わったところは?
 昔から裏町方面のパリが好きでした。
レ・アールが魚屋でいっぱいだった30年前も知ってるんですよ。グット・ドール通り(18区)界隈が死ぬほどスラムだったころにもクスクス食べに来てます。
16歳の時、この都市にはまりました。ただ、華の都パリってのは幻想でしかないような気がしてますよ。私のパリは、移民がうじゃうじゃいる都市なんです。

モンパルナス周辺の開発でいろんなアトリエがつぶされてしまったことはとても残念です。つまり嫌なのは、やはり古き良きものが壊されていくことですね。時代の流れに敏感すぎる東京やニューヨークに比べれば非常に近代化がゆっくりなので、パリに住んでいて良かったと思います。変わってほしくないですね。意識だけはグローバルになってほしい、でも風景はちゃんと取っておいてほしいんです。
パリはなんだかんだ言っても美しい。モンパルナスタワー以外はね。

13、 今のパリの楽しみ方は?
旅行者の方には「ガイドに書いてあることだけを信じないで」と言いたいですね。
パリは中心部だけ安全で、他は安全でないから行ってはだめ、なんて書いてある。中心部のほうがスリの被害は多いのにね。

シテ島も素敵だけど、11区や18区なんてあたりがオツだし、ファッションの流行発信地として今、”きてる” ポイントなんです。グット・ドールは近代化されちゃったんですが、なんだか面白い店ができ始めてます。サン・ベルナール教会の辺りにも発信源になりうる要素がいっぱい。パリ・コレクションで、この辺りでもショーが開催されるなど、知る人ぞ知る〈じわじわ震源地〉なんです。

シャンゼリゼに行って、その後ローマに入る旅行者がいっぱいのパリですが、本当の楽しい場所は、ガイドに書かれていない、隠されたところにあるんですよ。

14、 住んでいるカルチエはどんな雰囲気のところですか?
実は、映画「アメリ」の世界に一番近いカルチエです。
アメリは実に良くできていて、時代に先駆けて様々な〈じわじわ震源地〉を紹介しちゃってるんです。現実と何が違うかと言えば、みんな白人ばかりの世界にできてる。私の現実のアメリ・カルチエは黒人だらけ。アラブ人もいっぱい、中国人もいっぱいです。アメリを撮ったジュネは、「自分の幼い頃のパリ」みたいなものを表現したかったので全部白人となっていますが、本当のアメリのカルチエは、移民の世界。
私の住んでいるモンマルトルの裾野は、インド街、アラブ街、白人街、黒人街、中国人街に挟まれた多国籍街。すごく面白い所です。


15、パリの「おいしいもの」は?
マルシェがいっぱいのパリ。ビオもおいしいパリ。パンもおいしい。ニューヨークではハーレムに住んでましたが、近所には安いだけがとりえのまずいものしか無くて、サブウェイに乗って買い物に行っていました。パリは自分の周りがおいしいものだらけで、おいしいものの方が私を待っているんです。食べるものには困りませんね。

16、 パリの「お気に入りスポット」はありますか?
いっぱいありすぎます。でも、一番のお気に入りスポットは自分のアパルトマンです、デコ(レーション)がね。自分が夢見たそのままに作りました、全部手作りです。全てにこだわりまくりました。
しかも私の窓から正面に、敬愛する詩人ポール・エリュアールが最期を過ごしたアパルトマンが見えるんです。「ここに住め」って、運命だった気がします。

17、 人生のモットーをおしえてください。
なんだろう・・・人生を楽しむこと?
鳥が空を飛ぶようにいつも自由でいたいです。
モットーでもあり、願望でもありますね。

インタビューを終えて
ご主人と一緒に改装し空間を整えていった素敵なアパルトマン(兼Reikoさんアトリエ)には、フランスアンティークの調度や日本のおひなさまが共存しつつ、まさにモンマルトル界隈のように国籍がどこという限定の無い、不思議な居心地よさが漂っていました。
緻密に計算された〈デザイン〉が彼女の制作の特性、それが造形であってもモードであってもウェブであっても、随所に現れて彼女らしさが一貫し、枝はどこまでも伸びていっても幹は1本の、木のようだと思いました。天性の美術感覚と、チャンスを呼び寄せる才に恵まれ、また、徹底的にどこまでもこだわる姿勢がとても気持ちのよいマルチ・アーティストさんでした。ありがとうございました!


Michel Méry
パリ、一番のお気に入りスポットの自宅兼アトリエ




Michel Méry
愛猫と共に


プロフィールとインタビューその1 |その2

【back number】 vol.1 パリは私を放っておいてくれる街 平沢淑子さん
  vol.2 パリのエネルギー源は人間関係 芳野まいさん
  vol.3 エール・フランスパイロット 松下涼太さんに訊く
  番外編 ワイン評論家 “ジャン・マルク・カラン“に訊く
  vol.4 全てが絵になるパリの景色の中で 寺田朋子さん
  vol.5 マダム・ボ-シェに聞く
  vol.6 日仏交流の最前線で
  vol.7 パリで育ち、世界に羽ばたく 山田晃子さん
  vol.8 光に魅せられて 石井リーサ明理さん
 

vol.9 音楽の都・パリのピアニスト ジャン・ルイ・ ベイドンさん

 

vol.10 光を求めて マリー・ジョゼ・ラヴィさん

 

vol.11 「ミラベル Mira-Belle」帽子で世界一周とタイムトリップを

  vol.12 愛する街パリを描き続ける 赤木曠児郎さん
  vol.13 「ポーリーヌ・パン」バッグ
    クリエーションを支える人と人のつながり
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