愛に対する不信を両作品及び両作家(紫式部とラファイエット夫人)の心理理解の鍵として捉えて分析した論文。



セ・サンパ
感じいい!親切!ちょっと贅沢!「セ・サンパ」とパリジャンは表現します。そんなサンパなパリを、ほぼ毎週更新でご紹介しています。
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『クレーヴ公爵夫人』と『源氏物語』を比較する?一見すると、この企ては突飛に思えるかもしれません。前者は17世紀フランスの「小説」、後者は11世紀日本の「長編小説」です。さらに、両者の間には明確な「影響」や「模倣」があるわけでもありません(1)。比較は不可能に思えます。

しかし、視点を少し広げてみると、意外な共通点に驚かされます。実際、両作品の主題は同じであり、それは「愛の葛藤」です。『クレーヴ公爵夫人』は一人の女性と二人の男性の物語であり、『源氏物語』には複数の恋愛苦悩、特に二人の男性に愛される女性たちの苦悩が描かれています。ここまでは普遍的なテーマですが、特に注目すべきは、登場人物たちの性格が類似しており、行動の仕方も似ている点です。

すべての登場人物が同じように理想化されています。夫は誠実、恋人は優雅、そして女性は貞淑です。さらに、女性たちの苦悩の過程も非常に似通っており、このような展開は他の小説にはあまり見られません。彼女たちは、自然に湧き上がる愛情と社会的制約との間で引き裂かれ、やがてそれは夫の死や子の誕生に結び付いた罪の意識へと変わります。そして最終的には、同じ悲観論に到達し、ヒロインたちは、自らの感情を克服しようとして修道院に身を寄せます。この心理的葛藤の最終段階は、単に理性の勝利を示すというより、愛に対する不信感に深く根ざしています。

本稿では、このような葛藤の道筋をたどり、時空を超えて離れた二つの作品の間にある類似点を探ります。まず、作者たちがこの作品を書くに至った動機を、彼らの生きた時代の出来事や背景から探り、他の著作も手がかりとします。第二部では、登場人物の描写や人間関係、愛の本質、そして共通の主題である「愛への拒否と不信」について考察します。最後に簡単に、両作品が文学史において占める位置、すなわち先行する小説に対する独自性を検討します。

この二つの小説の比較は、極めて豊かで魅力的な主題ですが、残念ながら限られた時間内にすべてを掘り下げることはできません。たとえば、今回は『クレーヴ公爵夫人』の作者をラファイエット夫人、『源氏物語』を紫式部とし、主な執筆者としてのみ取り上げます。とはいえ、『クレーヴ公爵夫人』は共同制作であり、ラ・ロシュフーコー、ユエ、セグレも執筆に関与しています。一方、『源氏物語』については研究者の間でも意見が分かれています。紫式部が単独の作者であるとする意見もあれば、一部の章が他人によって書かれたとする説もあります。私たちは前者の立場を取り、紫式部を作者として本稿を進めます。『クレーヴ公爵夫人』に関しても、協力者はいたものの、ラファイエット夫人が主たる作者であると見なします。心ならずもの選択ではありますが、本稿の明確さと一貫性を保つために必要と考えました。



脚注:(1) Cl. PICHOIS et A.M. ROUSSEAU : La Litterature comparee ? Collection U2 ? Librairie Armand Colin, Paris 1971, p. 45.

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Yusuke HAKOYAMA
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