朝比奈 誼先生のフランス語にまつわる素敵なお話




セ・サンパ
感じいい!親切!ちょっと贅沢!「セ・サンパ」とパリジャンは表現します。そんなサンパなパリを、ほぼ毎週更新でご紹介しています。
選挙戦の混迷 2017.04エッセイ・リストback|next

Marine Le Pen候補 ※画像をクリックで拡大
 これを書いている今、Marine Le Pen候補の得票に関心があつまっている。「ル・モンド」紙の週刊版(3月11日号)はKantar Sofres-OnePoint(日本の「カンター・ジャパン」と同様、マーケッティングと世論調査を業務とする会社)による調査結果をもとに、第1面に大きくUn Français sur trois en accord avec les idées du FN et prêt à voter Le Pen「フランス国民の3人のうち1人は国民戦線の意見に賛成で、ル・ペン候補に投票するつもりでいる」という見出しを掲げた。この数字をどう受けとめるか?多いととるのか、それとも意外に少ないととるのか?
 見出しにつづくリードにはこうある。
 Malgré les efforts de Marine Le Pen pour dédiaboliser son parti, 58 % des Français le jugent dangereux pour la démocratie , 2 points de plus qu’en 2016.
 「国民戦線の悪いイメージを払拭しようとするマリーヌ・ル・ペンの努力にもかかわらず、 58%のフランス国民が同党は民主主義にとって危険だと考えている、2016年にくらべて2ポイント増えた」
 要するに、FN支持の拡大にかげりが見えてきたと言いたいのだ。
 ところが、そのとなりにはつぎのような文が置かれていて、これは逆様にとれる。
 Au total, 32% des sondés ont déjà voté pour le FN ou pensent le faire. Et ils sont 33% --- plus nombreux qu’en 2016---à se dire d’accord avec ses idées.
 「全体として、回答者の32%はこれまでにFN候補者に投票したか、あるいは投票しようと考えている。33%のフランス国民が―2016年よりも多く―FNの意見に賛成だと考えていることになる」
 そして、反右翼の立場が鮮明な同紙らしく、極右大統領登場の不安を抑えようと努めながら、リードの最終部分をこう結んでいる。
 La marge de progression de Marine Le Pen (à moins de 30% dans les sondages) d’ici au premier tour de la présidentielle est réelle.
 「マリーヌ・ル・ペン(世論調査では30%以下)には現時点(3月11日)から大統領選第1回投票(4月23日)までに人気拡大の余地がある」
 これを裏返せば、Hollande大統領を支える与党が不人気ということになる。事実、週刊版の4月8日号の見出しはそれを裏付けた。
 Comment l’élection présidentielle dynamite le Parti socialiste

選挙ポスター ※画像をクリックで拡大
 「如何にして大統領選挙が社会党を粉砕するか」
 なるほどBenoit Hamon氏を統一候補に選んでおきながら、大統領と袂をわかちEn marche「進行中」という新組織でたたかうEmmanuel Macron氏や、左派系の新組織La France insoumise「反抗のフランス」をバックにしたJean-Luc Mélanchon氏への支持を表明する社会党有力者があとを絶たない。同紙5面の見出しLe PS en marche vers son explosion「社会党、爆発に向けて進行中」は、あからさまに党名をもじっており、ヤケクソの印象を与えかねない。
 他方、右派も統一候補のFrançois Fillon氏の醜聞で伸び悩んでいる。
 そこで出てきたのがchangeursという新語だ。ル・モンド紙のAnne Chemin記者によると(les) électeurs qui, depuis janvier, hésitent à participer ou changent de candidat「1月以降、選挙への参加をためらっているか、もしくは候補を変えた有権者」を意味する。 要するに、日本でいう「浮動票」だろう。それが選挙の鍵をにぎっている。
 同記者はCevipof(Centre de recherches de Sciences Poパリ政経学院研究センター)の選挙調査をもとに、changeursのportrait-robot 「モンタージュ写真」を描こうとして、Ipsos-Sopra Steria(世論調査会社)のBrice Teinturier社長の意見を紹介する。
 まず、有権者の年齢が投票行動にどう影響するのか?
 Les plus de 65 ans sont plus souvent certains d’aller voter (24%) que les moins de 35 ans.
 「65歳以上では、投票に行くと決めている人(24%)が35歳以下よりも多い」
 ところが、いったん投票の決意を固めると、changeursの出方は逆転する。
 Parmi les moins de 35 ans, 18% ont changé leur vote depuis le mois de janvier, contre 24% parmi les plus de 65 ans.
「35歳以下では、1月以後に対象を変えた人は18%、これに対し、65歳以上では24%におよぶ」
 つぎにchangeursのle profil social et politique「社会的、政治的な特性」はどうか?
 Ce sont surtout des cadres, des diplomés du supérieur et des personnes qui disposent de hauts revenus. Dans ces catégories sociales, les effets de campagne semblent plus forts qu’ailleurs: ces électeurs sont plus sensibles que d’autres au déroulement des débats. Du point de vue politique, la mobilité est plus prononcée chez les électeurs de Benoit Hamon et d’Emmanuel Macron que chez ceux de Marine Le Pen.
 「それは特に、管理者、高等教育機関出身者、高収入を得ている人たちだ。こうした社会階層においては、選挙キャンペーンの効果が他の階層におけるより強く働くようだ。だから、こうした有権者たちは候補者たちの論戦の展開に他の階層より敏感に反応する。政治的立場に関しては、流動性はマリーヌ・ル・ペンの支持者よりもブノワ・アモンやエマニュエル・マクロンの支持者の方に顕著だ」
 ここまで記述を進めたところで、記者は前回大統領選挙の傾向との違いを指摘する。つまり、instabilité「不安定性」(ここでは支持候補を変えやすい、ということ)が問題になるのは以前はles salariés modestes et les citoyens qui se situaient au centre du spectre politique「低賃金の所得者や政治的分布の中道に位置する市民」だったのに、今回はどうやら異変が生じている、というのだ。changeursが誰に投票するのか、あるいは投票せずabstentionniste「棄権者、棄権主義者」にまわるのか、これを読む読者はすでに結果を知っているはずだ。


 
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